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⼈類総メディア時代の到来「政府はSNSの意見を積極的に反映していくべきか?」についての投票が開始(2023年3月31日〆切)

社会課題に特化したSNS【Surfvote】で、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授による「政府はSNSの意見を積極的に反映していくべきか?」についての投票が開始

政策や社会課題への参加をサポートするICTスタートアップのPolimill株式会社社(ポリミル、本社:東京都港区、代表取締役:横田えり、以下Polimill社)の一般向けサービス【Surfvote】上で提供されている、大学の先生や専門家による執筆コーナー【シンカブル】で、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授が「政府はSNSの意見を積極的に反映していくべきか?」について問う投票が開始。

一般向けに政策や社会課題への参加をサポートするサービス【Surfvote】上の、専門家による執筆コーナー【シンカブル】で、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授が「政府はSNSの意見を積極的に反映していくべきか?」について問う投票を開始しました。
山口真一准教授が執筆したイシュー(投票はこちらから)
https://surfvote.com/issues/ycmnstgb3r

山口准教授によるイシュー「政府はSNSの意見を積極的に反映していくべきか?」は以下の内容となっています。

■人類総メディア時代の到来
SNSが普及し、誰もが自由に情報発信することが可能になった。SNS普及する前であれば、そのようなことはマスメディアや著名人しかできなかったことであり、これはまさに革命的な出来事で、人類総メディア時代が到来したといっても過言ではないだろう。

■SNSによって若者をはじめとする国民の声が直接反映される
政府がそのようなSNSの意見を収集すれば、国民の声が政策に直接反映されるようになる。

例えば、「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルのブログが話題になったことがあった。当該ブログでは、保育園に落ちたことを述べたうえで、一億総活躍社会といいつつ保育園問題を解決できていない政府を批判していた。

この件は、タイトルが強烈だったこともありSNSで盛り上がり、インターネット署名や国会議事堂前デモに発展し、当時の厚生労働相が母親たちと面会して緊急対策をまとめる動きとなった。インターネットが大きく社会を動かした事例といえるだろう。

また、頻繁にハッシュタグ運動やTwitterデモも展開されている。例えば東京五輪の前には、「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」という2つのハッシュタグが話題になった。9日間で、前者はリツイートを含め85,115件投稿され、後者は64,526件投稿された(「ツイッター上で拡散した「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」を比較してみた」2021年5月、鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授、Yahoo!JAPANニュース)。

大きいものでいうと、内閣の判断によって検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案に関して、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグが広まり、約3日間でリツイートを含めて4,732,473件も投稿されたことがある(「「#検察庁法改正案に抗議します」はBotによる投稿か?ネット世論の分析の必要性について」2022年9月、iの視点)。

■SNSでは若者の声が反映されやすい
さらに、SNSには若者の声が反映されやすいのもメリットといえよう。

少子高齢化社会で、かつ、若者の投票率が低い中、若者の声は中々政治に反映されにくい。若者が意見を言いやすいサービスがSNSであり、政府がそれを見ることは、若者の声に耳を傾けることにもつながるだろう。

■ごく一部の声が大きく見えるのがSNS
一方、大きなデメリットとして、情報の偏りによる誤った政策展開が考えられる。

例えば、前述の「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ運動では、当該投稿をしたアカウントのたった2%が、全体のリツイートの半分以上を占めていた。この2%のアカウントは、70回以上リツイートしていたのだ(「「#検察庁法改正案に抗議します」はBotによる投稿か?ネット世論の分析の必要性について」2022年9月、iの視点)。

東京五輪の件も同様である。「#東京五輪は中止します」については、リツイート数の多かった上位5つのツイートは全て同じアカウントの発信であり、同アカウントの投稿は拡散全体の21%を占めていた。「#東京五輪の開催を支持します」も、リツイート数の多かった上位15個のツイートは全て2つのアカウントの発信であり、同アカウントの投稿は拡散の49.8%を占めていた。

結局全体では、リツイートを含め約15万件も投稿があったが、その34.6%の発信源はこの3つのアカウントによるものだったのだ(「ツイッター上で拡散した「#東京五輪は中止します」と「#東京五輪の開催を支持します」を比較してみた」2021年5月、鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授、Yahoo!JAPANニュース)。

■極端な人ほど多く発信する
SNSの情報の偏りはそれだけではない。少数の極端な意見を持っている人ほど多く発信し、多数存在する中庸な意見の人の声はほとんど出てこないという偏りもある。

筆者は以前、20代~60代の男女約3,000名を対象としたアンケート調査を実施し、意見の強さとSNS投稿行動の関係を分析した。具体的には、憲法改正という話題に対する「意見」と、「その話題についてSNSに投稿した回数」を調査し、分析した。

そのデータから、社会の意見分布とSNSでの投稿回数分布を分析した結果が図1である。まず、社会の意見分布は「どちらかといえば賛成(反対)」「どちらともいえない」といった中庸的な意見の多い山型の意見分布となった。しかし、SNSの投稿回数分布は、最も多いのが「非常に賛成である」人の意見(29%)で、次に多いのが「絶対に反対である」人の意見(17%)という、谷型の意見分布になったのである。

この強い意見を持っている人たちは、社会には7%ずつしか存在していなかったにもかかわらず、SNS上では合計46%と、約半分の意見を占めていた(「正義を振りかざす「極端な人」の正体」2020年9月、山口真一、光文社新書)。

図1 社会の意見分布とSNS上の投稿回数分布
出典:(「正義を振りかざす「極端な人」の正体」2020年9月、山口真一、光文社新書)

■偏りの背景
偏りが生まれる背景には、能動的な発信しかないというSNSの特徴がある。通常の世論調査は、質問をして意見を収集しているため、受動的な発信しかない。また、現実の会話やディスカッションでは、言葉のキャッチボールの中で受動的な発信と能動的な発信が両方ある。ディスカッションならモデレーターもいる。

しかし、SNSは能動的な発信しかない言論空間であり、言いたいことのある人だけが意見を言っているのである。その結果、SNS上に現れる言説は、強い想いを持った極端な意見が多くなる。

さて、政府はSNSの意見を積極的に収集し、政策に反映していくべきだろうか。

■山口真一准教授
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授。1986年生まれ。博士(経済学・慶應義塾大学)。2020年より現職。専門は計量経済学、ネットメディア論、情報経済論。NHKや日経新聞な等のメディアにも多数出演・掲載。KDDI Foundation Award貢献賞、組織学会高宮賞、情報通信学会論文賞(2回)、電気通信普及財団賞、紀伊國屋じんぶん大賞を受賞。主な著作に『ソーシャルメディア解体全書』(勁草書房)、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社)等がある。他に、東京大学客員連携研究員、早稲田大学ビジネススクール兼任講師、総務省・厚労省の有識者会議委員等を務める。

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