北海道苫小牧市では、生成AIを導入するだけで終わらせず、職員自らが学び、教え合い、活用を広げる取り組みが始まっています。
その中心にあるのが、2026年5月から週1回のペースで開催されている少人数制デジタルツール勉強会「ゆるデジ」です。
参加者は最大でも10人程度。役職呼びを禁止し、「こんなことを聞いてもいいのかな」という気持ちは部屋の外に置いてくる。講師は教壇に立たず、参加者の輪に入り、誰かの手が止まればすぐに気づく。用意された正解を一方的に教えるのではなく、実務を題材に、参加者全員で試し、考え、失敗も分かち合います。
第1回の参加者は、わずか2名でした。それでも回を重ね、対談時点で19回。8月21日には20回目を迎えました。

苫小牧市が令和7年度に実施した職員アンケートでは、生成AIを利用した職員の定着率は67.4%。89.1%が業務時間の削減効果を感じ、総合満足度は83.5%となりました。こうした数字の背景にあるのは、ツールの性能だけではありません。「分からない」と言える場をつくり、学びを個人の中に閉じ込めず、組織の力へ変えていく地道な実践です。

「DXを自分事に。」「職員を取り残さない。」を掲げる、苫小牧市 総務部DX推進室 DX推進担当課長補佐の平田拓也さん。そして、全国の自治体にQommonsAIを届け、自治体向け生成AI研修を牽引するPolimill代表取締役COOの谷口野乃花。
2人に共通するのは、研修講師として「学ぶ人の孤独」に向き合ってきた経験と、誰か一人の知識を組織全体の力へ変えようとしていることです。
生成AIを「導入する」段階から、自治体が自ら学び続ける段階へ。
さらに、その知見を自治体の外へ渡し、次の誰かの一歩につなげる段階へ。
「自治体AXは、競争ではなく共創である。」
苫小牧市の現場から見えた、新しい自治体人材育成の形と、誰も置き去りにしない行政の未来について語り合いました。

「導入したのに使われない」を越えるために

──苫小牧市では、生成AIの導入にあたり13製品もの実証を行い、2025年度には全庁的な本格導入へ進みました。その後、職員の利用を定着させるために集合研修を重ねられたそうですね。

平田さん: さまざまな製品を試す中で、生成AIは一部の部署や業務に限って活用するものではなく、すべての職員がそれぞれの業務に応じて使えるよう、基礎的なスキルとして身に付けていく必要があると考えるようになりました。2025年度には全庁的な本格導入を行い、Polimillさんの無償研修も活用しながら、庁内でも月に1回、30人から60人規模の集合研修を繰り返しました。
ただ、生成AIの研修は、実際にパソコンを操作するハンズオンが基本です。学校のようなパソコン教室があるわけではありませんから、会場、ネットワーク、PC、プロジェクター、スクリーンなどを準備しなければならない。中規模の研修は、事務局にとって大きな負担でした。
それだけ準備しても、研修中に「質問はありませんか」と聞くと反応がない。一方、終了後のアンケートには、「質問しづらかった」「サポート人員を増やしてほしい」と書かれる。研修の途中でついていけなくなり、手を止めた職員がいても、準備した研修の流れを進めるためには、いつまでも待つことができません。事務局の負担が大きい割に、実務への波及効果が薄いと感じていました。

──集合研修の形式だけでは解決しにくい課題があったのですね。

平田さん: ほかにも、さまざまな課題がありました。生成AIを使いこなす職員と使わない職員のスキルギャップが広がっていること、ツールを入れても定着しないこと、DXをBPRと捉えた途端にハードルが上がってしまうこと。そして何より、「私にはデジタルは関係ない」と、自分ごとになっていない職員がいることです。
一部の職員が使いこなせるだけでは、組織全体は変わりません。そこで考えたのが、少人数制の勉強会でした。新たな予算を必要としなかったこともあり、上司への提案と幹部会での周知を経て、2026年5月から始めました。
それが「ゆるっとデジタル勉強会」、略して「ゆるデジ」です。

金曜日に告知し、月曜日に開催。
参加者2名から始まった「ゆるデジ」

──「ゆるデジ」という名前には、どのような思いを込めたのでしょうか。

平田さん: デジタルが苦手な職員にも参加してもらえるように、まず心理的なハードルを下げたいと考えました。「研修」と聞くと、決められたことを教わる堅い場を想像する人もいます。でも、ゆるデジで目指したのは、一方的に教えることではありません。ゆるやかな雰囲気の中で、「こんなこともできるよね」と参加者全員で試し、学び合う場です。
同じ北海道内の岩見沢市さんや当別町さんの取り組みから着想を得ました。他の自治体の良い実践を学び、自分たちの組織に合う形に変えてみたんです。

──第1回は、どのようなスタートでしたか。

平田さん: 生成AIの入門編を行いました。まずは小さくても始めてみようと、金曜日の夕方に周知して、その次の月曜日の午後に開催しました。かなり急な日程だったこともあり、参加者は2名でした。
ただ、2名だったからこそ、参加者の部署の業務に合わせて、「この仕事なら、どう使えるだろう」と一緒に試すことができました。役所にはさまざまな部署があり、所掌事務の性格も全く異なります。一般的な利用例より、その部署の仕事に即した具体例を示した方が、理解につながる。第1回で、その手応えを感じました。
参加人数だけを見れば、小さなスタートです。でも、まさに「ゆるっと」を体現した回になりました。

谷口: 参加者が2名でも続けたこと、そして、2名だからこそできる学びに切り替えたことに、平田さんの強さを感じます。
研修は、どうしても参加人数や開催回数など、分かりやすい数字で評価されがちです。でも、本当に重要なのは、参加した人が自席に戻った翌日から使えるかどうかです。大人数に同じ説明を届けることと、一人ひとりの業務が変わることは、必ずしも同じではありません。
私たちも全国の自治体で研修を行う際、部署ごとの業務に即した具体例を示すことを大切にしています。例えば、文書作成と一口に言っても、福祉、税務、広報、企画では、必要な文脈も責任も違います。相手の実務まで理解しようとすることが、生成AIを「便利そうなもの」から「自分の仕事で使えるもの」に変えるのだと思います。

──現在は、どのくらいの規模で開催されていますか。

平田さん: 会場の定員は10名程度で、回によっては満席になります。対談時点で19回、8月21日に20回目を迎えました。週1回のペースを継続しています。
内容は、工事の騒音に関する市民から寄せられた声への対応をAIとの対話でシミュレーションしたり、有給取得促進に関する通知文書を作成したりと、できるだけ具体的にしています。参加者の所属やニーズに合わせたハンズオンが、最も効果的だと感じています。

「ゆるデジ」にPolimillも参加

2026年8月24日、Polimillのメンバーは、苫小牧市の「ゆるデジ」にオンラインで参加しました。テーマは「QommonsAIを活用した議会対応」です。

会場には、生成AIを日常的に使う職員だけでなく、活用経験が少ない職員も参加。冒頭では「役職にかかわらず『さん』付けで呼ぶ」「分からないことはいつでも質問する」「失敗しても構わない」といった約束を確認し、アイスブレイクで緊張をほぐしてから実践に入りました。

この日は、議員から通告のあった質問への対応を想定し、本会議での答弁に至るまでの一連の流れを、QommonsAIを使いながら実際に体験しました。まず、通告された質問項目について、過去の質疑から議員の関心分野や質問の傾向を調べて整理し、聞き取りに向けた準備を行いました。続いて、聞き取りを終えた想定で、ゼロから作る負担を減らしながら答弁の下書きを作成し、ニュアンスや表現を整え、想定される再質問も洗い出しました。参加者は、実際にPCを操作しながら、各段階を進めていました。

一方的な操作説明ではなく、参加者自身が手を動かし、途中でつまずけばその場で立ち止まる。詳しい職員が隣の職員を支え、同じ課題を一緒に解いていくことが、「ゆるデジ」の特徴です。

また、勉強会で繰り返し確認されたのが、生成AIはあくまで「補助者」だということです。過去の答弁の検索や論点整理、下書きの作成には役立ちますが、数字や法令、事実関係を確認し、最終的に判断するのは職員です。最初からすべてをAIに任せるのではなく、まず自分で考えた案をAIで磨く使い方も共有されました。

ゆるデジ

「ゆるデジ」は、特別な設備や大規模な予算を前提とした取り組みではありません。少人数で一つの実務課題を持ち寄り、実際に操作しながら、分からないことをその場で解消する。小さく始めて繰り返すことで、学びを日常業務へつなげています。

役職呼びは禁止。「分からない」を言える場は、
偶然には生まれない

──「ゆるい」勉強会でありながら、場づくりを丁寧に意識されています。心理的安全性を守るために、どのような工夫をしていますか。

平田さん: 冒頭で、毎回必ず「お約束」を確認しています。チャタムハウスルールとアンチハラスメントポリシーを適用し、役職呼びは禁止で、全員を「さん」付けで呼ぶ。「こんなことを聞いてもいいのかな」という気持ちは、部屋の外に置いてきてください、と伝えます。失敗も歓迎です。
最初には必ずアイスブレイクを入れます。例えば、「宝くじが当たったら何を買いますか」「今から習い事ができるとしたら何をしたいですか」といった、本当に身近な話題です。でも、仕事や役職と関係のない話を最初にするだけで、その後の質問や発言がしやすくなる気がしています。
「分からない」と言える空気は、自然に生まれるものではありません。意識して設計し、守り続ける必要があります。

ゆるデジルール

──若手職員が講師を務める回に管理職が参加すると、緊張感も生まれそうです。

平田さん: 若手が講師で、そこに管理職がいると、どうしても場が硬くなります。そういうときは、私や別の管理職がアイスブレイクの回答を少しいじったり、自虐を交えたりして、意識的に空気を和らげます。
役職呼びを禁止するだけでは、普段の上下関係がなくなるわけではありません。管理職側が自分から場をほぐして、「ここでは失敗してもよい」と行動で示すことが必要です。
一方、説明ばかりになると「ゆるデジ」ではなく「ガチデジ」(笑)になってしまいます。資料や段取りを作り込みすぎず、できるだけハンズオンを中心にすることも意識しています。

谷口: 8月24日に実際の「ゆるデジ」に参加して、名称だけが「ゆるい」のではなく、誰もが学びに参加できるように、丁寧に設計された場なのだと改めて感じました。
参加者の皆さんの習熟度は同じではありません。それでも、詳しい人だけが先へ進むのではなく、質問が出ればその場で立ち止まり、参加者同士でも画面を確認する。穏やかな空気の中に、「チーム全体でレベルアップする」という強い意思がありました。
平田さんの実践を見て、「誰も置き去りにしない」という言葉は理念だけでは足りないのだと感じました。呼び方、座り方、最初の問い、管理職の振る舞いまで、具体的な行動に落とし込んで初めて、場の文化になるのだと思います。

研修で最も怖いのは、受講者も講師も「孤独」になること

谷口: 平田さんに、研修をつくる者同士として、どうしても伺いたかったことがあります。研修をしていて、最も怖いのはどんな瞬間ですか。

平田さん: 集合研修を行っていた頃は、受講者が理解しているか分からないまま進めているときが、一番怖かったですね。
こちらが話しても反応がない。「これは伝わっているのだろうか」と不安になって、次第に一人で進めているような感覚になります。一方、受講者の側にも、分からなくなったのに声を上げられず、一人で取り残されている人がいる。講師も受講者も、それぞれ孤独になってしまうんです。

谷口: 本当によく分かります。私たちも、オンライン研修だけでは相手の理解度を完全には把握できません。
初級編の操作説明であればオンラインでも届けられますが、応用段階になると、受講者の画面を隣で見て、「ここで手が止まっている」と気づく感度が必要になります。質問がないことは、理解していることと同じではありません。聞けないまま諦めている可能性もある。その小さな変化を拾えないことに、講師として怖さを感じます。
「ゆるデジ」では、その孤独をどのように防いでいるのでしょうか。

平田さん: まず、講師が前に立たないようにしています。モニターから一番遠い席に座ると、参加者と同じ目線で画面を見られます。文字が小さくて見えにくいといったことにも気づけますし、全員の表情や手元も見渡せるので、手が止まっている人にも気づきやすくなります。
メイン講師のほかに、サポート役の職員を左右に配置して、ハンズオン中につまずいた人をその場でフォローできるようにもしています。
それから、反応が薄くなってきたら、意識的に参加者へ質問を投げかけます。少しだけ緊張感を走らせて、場を立て直すんです。

谷口: 座り方一つで、受講者の孤独と講師の孤独を同時に解いているのですね。平田さんのお話を聞いて、良い研修とは、上手に説明し切ることではなく、誰も一人にしないことなのだと、改めて感じました。この座り方は、私たちのチームでもすぐに試したいです。

「教える人」を増やすと、
組織は自ら学び始める

教える人を増やす

──「ゆるデジ」では、DX推進室の若手職員も講師を務めています。その狙いを教えてください。

平田さん: 基本的には、DX推進担当の5名がそれぞれツールを担当し、ローテーションで勉強会を主宰しています。週1回と聞くと大変そうですが、4人から5人で回せば、一人が担当するのは月に1回程度です。
若手職員は、最初は不安を感じていたようです。でも、実際に任せてみると、私よりずっと上手に説明していて、頼もしい限りでした。資料も、回を重ねるたびにブラッシュアップされています。
人に教えることは、自分の理解を一段深める良い方法だと思います。講師ができる人材が増えれば、特定の職員への属人化も防げますし、組織全体の力になります。
今後は、庁内の生成AI推進員やDX推進リーダーにも講師を担当してもらいたいと考えています。

──DX推進リーダーは20名いらっしゃるそうですね。

平田さん: 2025年度に、BPRの手法を集中的に学ぶDX推進リーダーを20名育成しました。ただ、研修を受けた1年目よりも、2年目以降のモチベーションをどう維持し、活躍する場をどうつくるかが課題です。
学んだ人を育成しただけで終わらせず、それぞれが現場でどのようにBPRを進め、どんな業務改善を行ったのかを発表してもらう。その生きた事例を共有する場として、「ゆるデジ」を活用したいと考えています。
育成した人に「次の役割」がなければ、せっかくの学びが個人の中で止まってしまいます。講師になることで、本人も学び直せますし、その経験が別の職員に渡っていきます。

谷口: 私たちも、まったく同じ課題に向き合っています。
「育てた人の、その先の場をつくる」という平田さんの考えは、私たちの人材育成にも重なります。研修を受ける人を増やすだけでは、チームは育ちません。次にその人が誰かへ教え、学びを更新し、組織へ返すところまで設計する。それが、自走するチームをつくるのだと思います。

ゆるデジ」が、Polimillの学び方も変えた

──苫小牧市の実践は、Polimillの社内にも影響を与えたそうですね。

谷口: はい。平田さんの「ゆるデジ」に影響を受け、Polimillでも、新しく入社した社員を含む営業メンバー同士で勉強会を開くようになりました。

ゆるデジ

私たちはQommonsAIを提供し、自治体の皆さんに使い方をお伝えする立場です。それだけに、「知っていて当然」「分からないと言ってはいけない」という空気が、知らないうちに生まれる可能性があります。でも、技術がこれだけ速く変わる時代に、一人ですべてを理解し続けることはできません。
分からないことをそのままにせず、誰かに聞けること。新しく入った人の疑問を、チーム全体の学びに変えること。教える側も、教えることで理解を更新すること。そうした場が、私たちにも必要だと気づかされました。
サービスを提供する企業が自治体へ一方的にノウハウを渡すのではなく、自治体の実践から企業も学び、社内のあり方を変えていく。私たちが考える共創とは、まさにこういう関係です。

平田さん: それはうれしいですね。Polimillさんのメンバーにも「ゆるデジ」に参加していただきましたが、講師役が変わると、同じ説明資料・進行でも解釈が変わりますし、AIが示す提案にも多様性が生まれます。それが勉強会自体のブラッシュアップにつながっています。自治体側が教わるだけではなく、お互いの実践を持ち寄って、より良い形に変えていける。そういう関係が理想だと思います。

谷口: 私もそう思います。

ツールの導入から、学びが自走する組織へ

──同じツールを導入しても、自治体によって活用の広がり方には差があります。苫小牧市では、なぜ職員自身が学びを回すところまで進められたのでしょうか。

平田さん: ツールを入れても使われないという問題は、多くの自治体が抱えていると思います。「ゆるデジ」は、その問題を新しい予算をかけず、泥臭く解決しようとする取り組みです。
ただ、苫小牧市がチームで取り組めているのは、中規模の自治体だからという面もあります。複数の職員で役割を分担し、属人化を防ぎながら人材を育てることができる。小規模自治体や一人情シスの体制では、それ自体が難しい場合があります。
だから、「苫小牧市でできたから、どこでも同じようにできる」と言うつもりはありません。むしろ、単独では難しい自治体があるからこそ、自治体間の共創が必要だと考えています。

谷口: 私たちも、全国の自治体とご一緒する中で、活用の差は担当者個人の熱意だけでは説明できないと感じています。
財政規模、職員数、情報政策部門の体制、庁内で相談できる人の有無など、置かれている条件は大きく異なります。熱意ある一人に頼り切れば、その人が異動したときに取り組みが止まるかもしれません。自治体AXを持続させるには、個人の力を組織の仕組みに変え、その仕組みを自治体同士でも支え合える形にしなければならない。

平田さん: 目指しているのは、点から面への変化です。
一人の詳しい職員がいるだけではなく、若手の意識が変わり、部署間、世代間で学びがつながっていく。さらに、自治体の外ともつながっていく。そのような状態をつくりたいですね。

QommonsAIが「共通言語」になれば、
知見を翻訳せずに渡せる

──平田さんは、QommonsAIが自治体間の「共通言語になる」と表現されています。どのような状態をイメージしていますか。
平田さん: 小規模な自治体にこそ、生成AIが必要だと思っています。ただ、担当者が一人で製品を調べ、比較し、実証し、ガイドラインを作り、研修まで行うのは現実的ではありません。
同じツールが多くの自治体で使われていれば、「うちではこう使っている」「この進め方はうまくいかなかった」という話を、そのまま共有できます。ツールや仕様の違いに合わせて、ノウハウを一から翻訳し直す必要がありません。それが、共通言語になるということです。

谷口: その言葉をいただけたことは、本当にうれしかったです。
QommonsAIを提供し始めた当初は、まず自治体の皆さんが安全に生成AIを使える環境を整えることに力を注いでいました。現在は、その次の段階に入りつつあります。
使える環境があるだけでなく、苫小牧市さんのように、自治体職員の皆さんが自発的に「自分たちの業務にどう生かすか」を考え、教え合い、独自の学びの場をつくり始めている。企業が利用方法を決めるのではなく、現場から新しい活用が生まれています。
別の自治体で生まれた工夫を、苫小牧市さんや私たちが学び直すこともできる。その循環によって、QommonsAIを単なるツールではなく、自治体の知恵が集まり、育つ基盤にしていきたいと考えています。

誰かの小さな一歩が、
次の自治体へ渡っていく

──最後に、全国の自治体職員の皆さんへ、自治体間の格差を生まないために「明日からできること」を一言ずつお願いします。

平田さん: 私たちも、当別町さんや岩見沢市さんなど、他の団体の取り組みを参考にしながら進めてきました。今は、デジタル庁の共創プラットフォームなどで、さまざまな事例が共有されています。まだ参加されていない方は、そこで他の自治体の事例に触れてみるだけでも、一歩になると思います。
完璧な計画や十分な予算が整うまで待たなくても、できることはあります。「ゆるデジ」も、小さな集まりからはじまりました。まず始めてみることが大切だと思います。

谷口: 私も、最初の一歩は大きくなくてよいと思っています。
誰か一人が始めたことは、必ず次の誰かへ渡せます。苫小牧市さんが岩見沢市さんや当別町さんの実践から着想を得たように、今度は苫小牧市さんの「ゆるデジ」が、別の自治体の学びの場につながっていく。Polimillもそこから学び、社内の勉強会を始めました。
教えた側が教えられ、支援する側も変わっていく。その連鎖こそが、共創なのだと思います。

生成AIを導入することが、ゴールではありません。分からない人を置き去りにせず、学んだ人が次の人へ手渡し、失敗も知恵として残しながら、組織全体で前へ進む。その先に、行政サービスを持続可能な形で未来へ残す自治体AXがあります。
一人で始めた一歩が、いつの間にか誰かの一歩とつながり、組織を越え、地域を越えていく。誰も、孤独にしない。自治体も、孤独にしない。
私たちは自治体の皆さんとともに、のこしたいみらいをつくっていきます。